ビーカーはお湯を入れると、とても熱い。
僕は半分、牛乳を入れるからいいけど、先生の分は慎重に制服の袖を伸ばした両手で包んで机まで運んだ。
「はい、どーぞ」
「オッ、サンキュな。
ところで氷室、オマエ、バンド辞めたんだってな」
「いったい、どこからそんな情報まで仕入れるんですか?」
「いや、いろいろと耳に入ってくるんでな。あれか、受験の為か?」
「違いますよ。単に意見が合わなかっただけです」
「そうか……。まあ、オマエは成績だけは落としたことないもんなぁー」
「“だ・け・は”って! 他に何を落としたって云うんですかっ」
「いや、その、あれだ……言葉のアヤってやつだよ。そう、噛みつくな」


