掻き鳴らせ、焦燥。〜春風に舞う〜



いつも通り慣れた手つきで戸棚からビーカーを二つ取り出すと、薬さじを使ってインスタントコーヒーをひとつは多めに入れ、もうひとつはお湯を半分にして注ぐ。



「氷室〜、先生は前から素朴に疑問に思ってるコトがあるんだがなぁー」


「何ですか?」


「オマエは何でわざわざ牛乳買ってきてカフェオレにして飲むの? 売店で売ってるだろ、カフェオレが?」


「ああ、これですか? 嫌なんですよ、甘いのが」


「あー、なるほどねぇ。オレはまた、背が伸びないかと頑張ってるのかと思ったよ〜」


「先生、そうやって遠回しに生徒の心を傷つけて楽しいですか?」


「いやいや、まさか。そんな訳ないだろー。これから伸びるよ、きっと」


「だと、いいですけどね」