渡り廊下の途中、校舎と校舎に挟まれた場所に一本だけ囲って残された古い大木。ひどく遅く咲くサクラがある。


生徒達からは“バカザクラ”なんて呼ばれることもあったけど、僕はこの木が好きだった。一人になっても、時期がズレても自分の役目を忘れないみたいで。


僕はいつも、この木に目だけで挨拶して通り過ぎる。