掻き鳴らせ、焦燥。〜春風に舞う〜



僕の準備が終わって、アキトさんが「じゃあ、いくよ」と云って、拍を取る。


スティックが「カッカッカッ」と響く。
四拍目…………深呼吸、それいけっ!


思わず遠慮がちに音を出したら、ナオヤさんが目配せしてくれた。
僕には「大丈夫、もっと出してイイよ」って声が聴こえるようだった。



安定感のあるドラムのリズムに身をまかせ、ナオヤさんに促されて自分の音を解放すると、唄い出しのナオヤさんの声に圧倒されて、更に自分を解き放つ。



置いてかれそうっ!!

そう思って、いつの間にか全力で掻き鳴らす。


追いつきたいっ!!
この二人に追いつきたいっ!

その一心だった。