「僕は、周りから見たら手が出る程羨ましいこの現状に、
不満を抱いていた。
けれど、皐月ちゃんの家の、
ねずみやヘビが出る話や、雨漏りが酷いから、傘を差してご飯を食べた話を聞いて、
恵まれていることに気付いたよ。
母が死んでしまって、父もほとんど家に帰ってこなくても、
僕には兄弟がいる。
僕は好きな絵を描くことができる。
自分がいかに幸せかを気付いたんだ。
だから、皐月ちゃんがいなくなったとしても、
僕には多くの幸せがあるから、光は消えないんだ。
けれど、今の光が全て皐月ちゃんから与えられているものだと思ったら、
皐月ちゃんがいなくなった時点で、光は消えてしまうんだ。
それを、皐月ちゃんから教わったんだよ。」
率直に言うと、戸惑ってしまった。
なぜなら、あたしは、そんなことを考えて生きてなかったから。
自分が、幸せとか、不幸とか、
考えたこともなかった。
ただ、家族が好きで、
皆が好きで、
それだけだった。
その時のあたしは、優貴さんの言葉の意味を分かっていたようで、分かっていなかった。
何か大切なものがなくなるなんて、考えてもみなかったから。



