決して、謙遜したつもりはなかった。


あたしは何もしていないし、与えられた仕事をやっていただけだった。

むしろ、喧嘩したり、騒いだり、トラブルばかり起していたから。


「僕は不思議だったんだ。

皐月ちゃんは、大家族でお金に困ってうちに来たと聞いていたから、

落ち込んで塞ぎこんでしまうんじゃないかって心配してたんだ。

そしたら、初日から満を殴るし、常に前向きで明るいし、すぐに僕達を虜にしてしまった。」


優貴さんは笑いながら話した。


あたしはまた、満を殴った話を持ち出され赤面した。


これからもずっと、このネタでいじられるんだろうなと思った。


「皐月ちゃんは、決して裕福な家庭に育ったわけじゃないのに、常に幸せそうだった。

僕達のお金を湯水のように使う生活を目の当たりにしても、決して羨ましそうにはしなかった。

家族を一番に考えて、

家族を愛して、

今まで沢山我慢しなければいけないことがあったはずなのに、一切文句を聞いたことがない。


聞くのは、楽しかった思い出ばかり。僕らが驚くような貧乏話も、まるで宝物のことを話すかのように、嬉しそうに笑い話にする。


世の中の人々は、僕らを羨ましがる。


そんなにお金があったら、自分だったら、あーしたり、こーしたりと夢を膨らませて。


でも、僕らは……


いや、少なくても僕は、


幸せではなかったんだ。」