「どうして、絵のモデルにあたしを選んだんですか?」


優貴さんは筆を止めた。



「輝いてたから。」


「輝いていた?」


全く想像していなかった答えだった。


「皐月ちゃんに、幸せって何かを学んだんだ。」


突然、哲学的なことを言われ、戸惑ってしまった。


優貴さんは時々、あたしには難しすぎる話をする。


賢いんだなぁとは思うけど、実際よく分からないことが多かった。




「以前にも、ちらっと言ったことがあるかもしれないけど、


皐月ちゃんが来るまで、うちには笑いがなかったんだ。


儀式的に兄弟集まって食事はするけど会話はほとんどない。


お金はあるけど、家族の温かみに欠ける、そんな家だったんだ。」



なんとなく、分かる気がした。


最初にこのお屋敷に入った時、ひんやりとしたものを感じた。


人の温もりのない、愛に飢えた家。


「そんな僕たちを変えたのは、皐月ちゃんの天真爛漫な笑顔だったんだ。

皐月ちゃんがいると、自然と家が明るくなったし、

瞬も満も心から笑うようになった。皐月ちゃんのエネルギーが僕を含めて、皆に伝染したんだよ。」


「そんな、買いかぶりすぎです。」