しみ一つない白いソックスを汚し、ピカピカの歩き辛い革靴を泥まみれにして遊ぶのは、とても楽しかった。


父親が、皐月の父親から開放されて家から出てきて、汚れた満を見て顔をしかめたが、満はへっちゃらだった。


何かが満の中ではじけた。


世の中には面白いことが沢山あるんだ!

我慢することなんてないんだ!


満は大きな錘が外れたように、心がスッと軽くなった。


「じゃーねー!」


と大きく手を振る皐月を何度も振り返って手を振り返した。

二人で遊んだ時間は、一時間にも満たなかったかもしれない。


それでも満の心に与えた影響は計り知れなかった。


夢のようなひと時を10年経った今でも、



宝物のように大事にしていたのである。