いつもなら運転手付きの高級車に乗って移動するのに、今日はなぜか徒歩だった。


何か不都合があったらしい。


父親の機嫌が悪いのはそのせいかもしれない。


車に乗っていても会話はなし。


ひんやりと冷たいエアコンが付いた車内は、会話がない寂しさを一層心細く感じさせた。


歩くと聞いて、本当は嬉しかった満だったが、父親の大きな手と、自分の小さな手を見つめ、


甘えられない寂しさで、伸ばした手を引っ込めた。