FAKE‐LAKE

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「……ジェ……アンジェ」
 レイの心配そうな声が聞こえ、アンジェは重たい瞼を開けた。気のせいか視界が歪んで見える。
「どうしたの? うなされてたけど」
 額に手を置かれる。ひんやりした感覚が気持ち良い。
 アンジェは起き上がろうとしたが、頭全体が鈍く痛み、体がだるくて力が入らなかった。
「風邪かな……具合悪い?」
 首を横に振り、アンジェは笑顔を作る。
「もう少し休んでいれば、良くなるし、大丈夫」
 慣れてるから、と笑うアンジェを、レイは不安そうな表情で見つめた。
 アンジェ、昨日は元気そうだったのに。それとも僕が気が付かなかっただけで、調子悪かったのかな。
 大丈夫と言いつつ荒い息遣いをしているアンジェに何をしてあげたらいいか、レイは必死で考えた。
「何か、飲むものいる?」
「じゃあ……水を」
 パタパタと階段を下りていくレイの足音を聞きながら、アンジェはゆっくり息をつく。目をつぶると浮かぶ夢の残像。
 いいや、違う。アンジェは一人首を振った。
 夢じゃない。思い出してきてるんだ。せき止められていた水が流れ込むように一気に記憶が戻っていく。
『独りが、怖い』
 昨日レイの言葉を聞いてから、一晩中フラッシュバックのように昔の事を思い出している。そう、“独り”になる前の事を。
 熱が出ているのはそのせいだ、とアンジェは思う。本当にそうかは分からないけれど。
「思い出したくないのに……」
 どうして忘れていたのかは分からない。ただ言えるのは、レイに出会った事で記憶にかけられていた鍵が徐々に開き始めていた事。そして、その“過去”から自分は逃げられないという事だ。
 ああ、頭が痛い。左腕が疼く。
『――おじさん、どうして僕の左腕にはこんな模様があるの?』
 ひどくなる頭痛に小さく呻き、アンジェは枕に顔を埋めた。そのまま、また眠りに落ちる。
 夢の中で、彼は今まで忘れていた――“興味がない”と逃げていた自分の“過去”の中をさ迷っていた。