FAKE‐LAKE

「じゃあ、また一月後に」

医師は帰り支度をし、鞄を持って立ち上がる。これもいつもと同じ光景だ。

「あ、あの、」

アンジェは慌てて医師を呼び止めた。今日は絶対聞こうと決めていた。そう、自分は何の病気なのか。

しかし。

「何だい? アンジェ」

振り返った医師の笑顔を見たら、あれだけ考えたはずの言葉が出てこなかった。

優しい笑顔なのに、目が笑っていない。考えている事を全て見透かされてしまいそうな視線。心の中を探るような眼差し。

急に怖くなり、アンジェは逃げるように目を逸らした。

「先生……は、お名前は、何て……?」

アンジェは咄嗟に質問を変えた。言葉使いが少し変だ、と屋根裏部屋にいたレイは首を傾げる。

「どうしたんだい? 急に」

医師は笑った。穏やかな笑い声。しかし、アンジェにはその表情を見る勇気はなかった。それ位、医師の目は鋭かった。