FAKE‐LAKE

レイ、助けてあげられなくてごめん。守ってあげられなくてごめん。

辛かっただろう? 痛かっただろう? あんなにされて、どれだけ苦しかっただろう……。



泣いて泣いて泣きつくしたアンジェはその夜絵を描いた。

記憶に焼き付いているレイのいろんな表情を何枚も何枚も描いた。無心に描いていた絵のほとんどが笑顔だった。

夢中に描き続け、気付けば夜が明けている。そんな日を何日も何日も繰り返した。


その日からアンジェはレイの名前を一切口にしなくなった。それでも人に見せずに描いていた絵はレイの姿ばかり。


記憶の中のレイはいつも笑っている。

彼は自分の生い立ちを悲観することなく、最期まで前を向いて強く生きた。

だからせめて、僕も彼のように前を向いて生きよう。

もう二度と、死のうとしたりしない。


「春には花が咲くかな……」

半年後、あの森に戻ったアンジェは、レイが遺した杏の木を庭に植えてそっと呟いた。