FAKE‐LAKE

『ニールへ
 いつこのメモに気づくか分からないけど、先に書いておきます。
 レイと僕を弟みたいに可愛がってくれてありがとう。
 僕はレイを取り返しに行きます。
 もしかしたら生きて帰れないかも知れない。それでも構わない。
 もしレイだけでも助けられたら、僕の代わりにレイの家族になってあげて下さい。
 今までありがとう。 アンジェ』
 見かけによらず無愛想な短い手紙。ニールの頭の中にその一文が繰り返し鳴り響く。
 イキテ カエレナイ――
 突然火がついたようにニールは階段を転がり降りた。一人で乗り込むなんて無謀だ。アンジェを止めなきゃ!
「おい待てニール」
 飛び出す寸前でシアナに捕まり、ニールはもがきながら叫んだ。
「遅かった! 一歩遅かったんだ、おれ」
 シアナは、外に出ようとするニールをしっかり掴んで止めた。今大声でアンジェを呼ばれたらニールも捕まるかもしれない。
「アンジェ、きっと乗り込んだんだ! 博士とかいう奴の所に」
「落ちつけニール。どうしてそう思う?」
「野生の勘だよ!」
 ニールはシアナを振り切り、勢いよく戸棚を開けた。
 手を付けられずに残っている食材。ただ、ニールの勘を肯定するように、いつもそこにあるはずの薬の袋だけが無かった。
「やっぱり……」
 瞬時に何か思い付いたらしく、シアナはニールの肩を叩いて言った。
「行くぞ」
「どこへ」
「アンジェの所だ。どう動くかは俺にまかせろ。国境でのパスはなんとかするから手助けしてくれ」
「分かった」
 ニールは大きく頷いてシアナについていく。

 アンジェのバカ。どうして、どうして一人で行くんだよ。
 裏道を行くシアナにこの後の計画を説明されながら、ニールは膨らみ続ける不安をなだめていた。