FAKE‐LAKE

「なんだってあんな坊主見張ってなきゃいけないんだ? どうせCORD-Aじゃなかったんだろ」
 いつもアンジェを見張っているロスタナの兵が、暇を持て余して欠伸をしながら歩いている。油断しているのだろう、いつも腰に付けている武器が見当たらない。
「それがさ、何故かあのチビがやたら坊主に懐いてるんだよ。で、チビが言う事聞かない時は坊主を殺すって脅して従わせてるんだ。ま、人質ってとこかな」
「へぇ、博士も人が悪いな」
「全くだ。ま、することも大してないし、俺達は楽出来ていいがな」
「確かに」
 明るく笑いあった兵の一人が、突然表情を固くした。
「ん? どうした?」
 もう一人はその視線の先を追う。その先にいたのは――
「お、お前」
 思わず後退りする二人が見たのは、湖を背にして立つ人影。
 目で人を殺せそうな程恐ろしい形相をした少年が、蒼い炎に似た深い怒りを全身からたぎらせてそこにいた。
「……博士は今どこにいるんですか」
 低い声色が白く霞みがちな空気に不気味に響く。
「答えないなら撃ちます」
「何……?」
 すっ、とアンジェの左手が上がった。
「うわっ」
 凶器と化した鉛筆が右側の兵の頬を掠める。つ、と赤いものが伝った。