FAKE‐LAKE

 ゆっくりアンジェが振り返った。眠れていないのだろう、また顔色が悪い。
「どうも」
 昔のような暗い笑顔を浮かべたアンジェは、引き攣った笑顔のニールと家に入る。
 扉を閉めた瞬間、アンジェはニールから荷物を奪い取るようにして受け取り、冷たく言い放った。
「荷物を置いてすぐに帰って」
「え、おい待てよアンジェ」
「早く帰って。疲れてるんだ僕」
 目を合わせようともせず、アンジェはさっさと荷物を片付け始める。
「おいアンジェ」
 ニールが肩を掴むとアンジェは振り向いて睨んだ。
「帰れ」
 その大きな栗色の瞳の奥に悲しみが見えた気がして。
 本当にレイはいなくなったんだ。ニールの喉元に塊のような物がつかえた。
「アンジェ、あの」
「僕に話し掛けるな。早く帰れ」
 珍しく乱暴な口調で言い、アンジェは逃げるように二階に上がろうとする。
 もしかしてアンジェは、おれがレイの事をばらしたと誤解してるんじゃないだろうか。
 態度がころっと変わったアンジェに不安を感じたニールは、慌てて後を追った。
「おいアンジェ、話を」
「聞きたくない。さっきも言っただろ、僕は疲れてるんだ」
 話すら聞こうとしないアンジェに、さすがにむっとしたニールは強行手段に出た。
 アンジェの腕をひっ掴んで部屋に入り扉を閉める。幸いアンジェは自分よりもかなり非力だ。壁に押し付けて逃げられないようにし、話しだす。
「アンジェ、怒る前に話を聞け」
「嫌だ、帰れ。でなきゃ僕が出て行く」
 頑なに言い張るアンジェの頬を、ニールは思いっ切り叩いていた。
 手が、声が震える。
「お前、レイがいなくなって悲しいのは自分だけだと思ってんのか」