FAKE‐LAKE

 悲しくて、悔しくて。
 レイは深く俯いた。服の肩や胸元がスープと水で濡れている。
 体の痛みを堪えて頭を下げ、レイは濡れた服をくわえた。
 布地に染み込んだわずかな水を吸う。汚れて埃っぽい服に染みた薄いスープでさえご馳走に思えた。
 少しだけ癒えた渇きにほっとして、レイはまた横になった。とりあえず明日までは生きられそうだ、と一人微笑む。


 安らぎもつかの間、別の兵がやって来た。
「今日からお前の躾を任された。その強情な性格を叩き直してやる」
 体格の良い兵は手にしている鞭を振り上げ、威嚇するように床を打つ。
「……無駄、だよ」
 兵の脅しにもびくつかず、掠れた声でレイは言い返す。
「僕は……博士の言、いなりにはならない、絶対に」
 黒蛇が唸り、レイの右肩から斜めに服を切り裂いた。
「自分の立場が分かっていないようだな」
 激痛に呻きながらなおも睨み返すレイを、兵は恐ろしい目つきで見下ろす。
「二週間かけてじっくり教えてやろう。口で言って分からないのなら体に叩きこむまでだ」
 兵は体を縮めて身を守ろうとするレイを打ち続けながら怒鳴った。
「この化け物!」
 服が裂かれ、ぼろ切れになっていく。
「人間の道具にしてもらえるだけありがたいと思え!」
 打たれる度に肌が裂けて血が滲む。
「いいか、黙って従え! お前は何も考えずに、ただ言われた事に従えばいいんだ!」
「嫌……だ!」
 ありったけの力を振り絞ってレイは抗った。
「僕は、道具、じゃな……っ!」
 続きの言葉は鋭い痛みに薙ぎ払われる。
「道具じゃないなら、お前に生きている価値は無い!」
 鞭に埋め込まれた鉄爪はレイの身体に食い込み、繰り返される罵倒は彼の心を容赦なくえぐった。