FAKE‐LAKE

「あれ?」
 夕食の後、いつものように薬を飲もうとしたアンジェは一日分の袋を取り出して驚いた。ニールが持って来てくれた一週間分の薬の紙袋を逆さにして確認する。
「……どうして?」
 袋はきちんと七日分ある。しかし全部中が空なのだ。毎週きっちり日数分届けられ、毎日きちんと飲んでいるので予備はない。
「どうしたの?」
 ソファーに座り、スケッチブックの絵を見ていたレイが不思議そうにこちらを見ている。アンジェは薬の袋を隠して答えた。
「薬出してただけだよ」
 どうしたらいいだろう。昔、一度薬を飲まずにいたら苦しくなった事を思い出す。
 でも最近はあの頃と比べて調子がいいから、少しなら薬が無くても大丈夫かも知れない。どちらにしろ、ニールが来てくれるまで薬を頼む事は出来ない。
 アンジェは一つ深呼吸した。
 きっと、大丈夫。自分に言い聞かせた。


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「ニール君は物知りで働き者で、本当に助かるよ」
 水曜日の早朝、配達所のバイトに行ったニールの働き振りを所長は褒めちぎった。
「なんならうちに転職しないかい?」
「え、そいつぁ無理っすよ。おれ今の仕事好きだし」
 この仕事もめちゃくちゃ楽しいですけど、とニールは大量の新聞に囲まれて笑った。
「そうだよな、君みたいな働き者を雇いたい雇用者は沢山いるだろうしな」
 所長は仕分け作業を進めながら少し残念そうに言う。
「ニール、モテモテだな」
 憎いなぁと笑いながら、シアナは不要な新聞を紐で纏めていく。
「女の子にはぜーんぜんモテないけどねー」
 ふて腐れたように言うニールの言い方が可笑しくて、所長もシアナも楽しそうに声をたてて笑った。