FAKE‐LAKE


 ◇ ◇ ◇


「あの、すみません!」
 翌週の月曜、いつものようにニールがアンジェの配達に向かっていると、森の入口辺りで白衣姿の青年に後ろから呼び止められた。
「……なんすか?」
 普段人の行き来がない場所に突然現れた見知らぬ人間をニールは訝しげに睨む。
「あの、アンジェさんの家に配達しておられる方ですよね?」
「……」
 無言で肯定しているニールの表情を見て、茶髪の青年はぺこりと頭を下げた。
「私、アンジェさんの担当医に頼まれて薬の交換をお願いにきました」
 一歩遅くて間に合わないかと思いました、と気さくに笑う青年の人懐っこい笑顔に、ニールは警戒していた表情を緩めた。
「これすか?」
 ニールは荷物の中から白い紙袋を取り出して彼に手渡す。
「そうです! こちらと交換で」
 青年から受け取った紙袋を荷物に入れ直した。
「ああ、よかった! ここだけの話、先生が他の患者と間違えて処方しちゃったんですよ」
 家は分からないしどうしようかと思いました、と胸を撫で下ろす彼に、ニールもよかったと笑顔を返した。
「じゃ、よろしくお願いします!」
 去って行く彼の後ろ姿を見てニールは呟く。
「いいことしたな」
 よっしゃと一人で無意味に意気込み、ニールはアンジェの家へと急いだ。