FAKE‐LAKE

「一応リアレスクに赤い印つけときました。アンジェさんの家がある山は緑の印です」

ニールが地図を開きながら説明しようとすると、アンジェはぽつりと言った。

「あの、お願いがあるんですが」

「はい何でしょう」

方角を知りたいのか? それとももっと詳しい地図がよかったのか?

ところが、アンジェはニールが予想したのとは違うお願いを口にした。

「“さん”つけて呼ぶの、止めてほしいんです」

できれば敬語も、とアンジェは遠慮がちに言う。

そのお願いにニールは驚く反面、嬉しさも感じた。同時に親方の忠告が耳に響く。

『仕事の関係以上に親しくならない方がいい』

「ど、どうして? おれは仕事で来てる訳で、アンジェ……さんはお客様な訳で」

ニールがしどろもどろに言うと、アンジェは目を上げた。

「僕、普通になりたいんです」