FAKE‐LAKE

 一階には食堂と、使っていない居間――アツキに言わせればダンスフロア――そして、セティが部屋として使っている応接室。
 アツキの部屋は一階の一番奥にある物置部屋だ。物置と言っても出窓がついている。不思議だ。金持ちの考える事はよく分からない。
 セティは好きな部屋を好きに使えと言ってくれたが、気に入った大きさの部屋はそこしかなかった。隅っこだと“仕事”の時何かと出入りしやすい事もあり、アツキはそこを自分の『基地』に選んだ。
「叔父さんの部屋っていつも綺麗よね」
 日当たりの良い場所に置かれたソファーに座り、リーナは感心したように部屋を見回す。
 確かにセティの部屋が荒れているのを見たことがない。強いて言えば、この間アツキが割った本棚のガラスが穴抜けしている事くらいか。
 セティの悲しげな表情を思い出し、つんと胸が痛む。「座ろ?」
 リーナが笑顔でアツキを手招きした。
 二人きり。他人の部屋だけれど。
 この間、優しく抱きしめられた温かさを思い出して妙に意識してしまう。
 アツキはリーナから一人分の距離をおいて隣に座った。心臓の音が聞こえないように。
「そういえばアツキ、叔父さんに何か用があるの? ずっと待ってたよね。急ぎ?」
「いや、用があるって言うより顔見たいなってさ」
 珍しく素直な気持ちを口にしてみる。リーナは楽しそうにふふ、と笑った。
「アツキ、叔父さんの事大好きだもんねぇ」
 確かにそうなんだけど、一番大好きな子にそう言われるのは何か複雑だ。
「セティ、仕事?」
「多分ね」
 リーナは曖昧に答えて、少しアツキのそばに寄る。
 カチ、と時計の針が重なる音がした。正午だ。