店に入ると、窓際の一番手前の席に座っていた。
立ち上がり、手を上げる。
笑顔が一瞬固まったのを、見逃さない。
―きっと俺の存在を見つけてしまったからだろう。
「潤くん、元気だった?試験お疲れ様!」
まだ席にも着いていないのに、万桜は言う。
「すぐにここ、分かったか?」
そして、無事に到着した事を安心する『元彼』。
俺は万桜の横で、二人のやり取りを眺めている。
「ヒロ先輩と一緒に来たから…。」
嬉しそうに俺を見上げる。
今やっと、入り込めた。
この二人の間に。
「確か…サッカー部の?」
穏やかな表情は崩れる事はない。
「どうも、岩城潤(いわきじゅん)です。」
「ああ園田宏慶(そのだひろみち)です。」
俺達は岩城さんの向かいに座った。
「もしかして、万桜の彼氏かな…?」
覚えていた。
男のくせに、艶っぽい目。
その目でチラリと俺を見て、また万桜に視線を戻す岩城さん。
「実は、そうなの。」
恥かしいそうに、でもハッキリと宣言した。
万桜…。
嬉しさが込み上げて来た。

