「宏慶、話したい事あるの。」

悪びれる風もなく、静佳は言う。

彼女の言葉を無視し、俺は言い放った。

「…迷惑なんだ、もう俺の前に現れないで欲しい。」

「……。」

「俺達はもう、終わってるだろ。話す事は何もないだろ。」

万桜に心配をかけたくない。

嫌われたくない。

ずっと一緒にいたい。

「彼女に本気なの？」

静佳は視線をチラリと後ろに向けた。

「俺の中、万桜でいっぱいなんだ。」

「…分かったわ。」

静佳は髪をかき上げて、そう言った。

ズルイよな、俺。

今まで散々女にヒドイ事を言ってきたのに。

今、その気持ちが痛いほど分かる。

好きだから、自分以外の存在を知りたいと思うんだ。

離れたくないから、すがりつくんだ。

『彼女面するなよ』『しつこいんだよ』『お前の事、何とも思ってないよ』俺は平気で言ってきた。

万桜を好きになって、やっと分かった。

相手にも、気持ちがあるんだ。

軽はずみな行動と、心ない言葉で俺は何人の女を傷付けてきたんだ。

もう、そんな事は終わらせる。