「ここで待ってて。」

映画館のロビーの長椅子にアタシを座らせて、旬磨先輩はチケットを買いに行った。

どの映画を見るかは『ナイショ』と教えてくれない。

ここは二回目。

一度目は四人で、今日みたいに映画を見に来た。

ヒロ先輩と旬磨先輩とこの学園に来てから親友になった亜子(あこ)と。

ヒロ先輩と観覧車に乗った事を思い出した。

高所恐怖症のアタシを『大丈夫だよ』と優しく抱き締めてくれた。

今日もヒロ先輩は、女子寮まで旬磨先輩と送ってくれて、その間ずっと『マジで行くの??』とアタシに聞きまくっていた。

もう最後には『実家帰るの止める!!』とまで言い始めて…。

その様子が可愛かった。

何とか二人で説得して、ヒロ先輩は渋々実家へと帰ると約束した。

『帰って来たら電話かけて』真面目顔で何度もそう言っていた。

今頃どの辺かな??

バスと電車を乗り継いで二時間半位って言ってた。

「お待たせ。」

旬磨先輩は両手に飲み物を持って隣りに座る。

「今日はコーヒー禁止な。成長期に良くないぞ。」

ひとつ、アタシに手渡す。

「…ありがとうございます。あはは、お父さんみたい。」

飲み物を受け取った。