その人の視線を背中に感じる。
早く、早く帰りたい。
「………。」
「…ごめんな、万桜。」
いつもの優しいヒロ先輩だった。
「…うん。」
「その…。」
「何、お前あの女とまだ会ってるワケ?」
言いかけた時、旬磨先輩が先に口を開いた。
その口調もまた、怒っている。
「違うよ!そんなんじゃない!」
二人の会話をぼーっと聞いていた。
不安な気持ちに襲われて、ただ泣きたいのをガマンしていた。
気持ちの正体も分からないのに、『二人できちんと話しな』と旬磨先輩はいつも女子寮へ向う角を反対に曲がった。
ヒロ先輩と二人で歩いた。

