今さら何があるっていうんだ?

「宏慶ったら、全然電話に出てくれないのに急にそっちからかけてきて。」

大人の表情で笑ってみせる。

そうだ。

言わなければならない。

今言えばいい。

それで何もかも、なかった事になる。

「あのさ――。」

「あれ旬くんだよね!」

聞こえなかったのか、聞こえないフリをしたのか、静佳は向こうにいる旬磨を指差す。

「!」

そして、止めようと伸ばした俺の手をするりと抜け小走りに駆け出す。

「待てよ…。」

行くな。

そこには万桜だっているんだ――。