一年前、ヒロ先輩はこの学園から一足早く卒業した。

寂しくなんてなかった。

だってアタシのお財布の中には、大切な物がしまってある。

ヒロ先輩の部屋の合鍵が。

卒業した先輩は寮を出て一人暮らしを始めた。

その部屋の鍵がアタシの宝物。

でもまだ使った事、ないんだ。

だって一人で辿り着いた事、ないんだもん。

一度目はバスに乗って駅まで行き地下鉄に乗ったけど、ひとつ手前で降りて…。

二度目はきちんと降りたけど、出口を反対側から出ちゃって。

次からは駅までヒロ先輩が迎えに来るようになって…。