近くにあったのに、手が届かなかった。

ううん、手を伸さなかった。

次第に大きくなる不安に押しつぶさた。

「俺、格好悪いだろ。」

頭の上から聞こえるヒロ先輩の声。

「そんな事ないよ。格好悪くなんか、ないよ。」

流れる涙は、嬉しいからかな?

安心したから、かな?

「万桜、俺の事好き?」

「大好き。」

「俺も…愛してる。」

ふふっ、さっきも聞いたよ。

時間が止まっていた。

アタシ達の周りだけ。