ヒロ先輩は、久保梓の事をこう説明した。

「家が近所でさ、兄貴と中学まで一緒だったんだ。和哉(かずや)って言うんだけど、高校は別のトコ通ってる。梓とは…高校生になってから会ってなかったから、超ビックリしたよ!」

ヒロ先輩は、ただの幼馴染みを強調した。

でも彼女は、『ヒロ以外は眼中にない』といった態度だった。

部のメンバーは、気遣いをみせ話し掛けるが『はぁ』とか曖昧に聞き流してしまう。

そして練習中でも構わずにヒロ先輩を追いかける。

少なからずとも、練習に支障が出ていた。

そして残りの二人は、久保梓に無理に付き合わされている、といった感じで見学もそっちのけで始まるおしゃべり。

アタシは恐れていた。

この悪い雰囲気の原因がヒロ先輩にあるように、思われる事が。

実際、ここ何日かヒロ先輩の笑い声が聞こえないサッカー部。

「マネージャー。」

キャプテンがアタシの隣りに腰を下ろした。