別に良かったんだ。

万桜が楽しそうに話してるんなら。

相手が俺以外の男でも。

後からちょっとからかい気味に『何話してるんだよ。』って聞いたら、それで済むから。

でも、悲しそうな万桜の顔を見た時我慢出来なくなった。

昨日の岩城さんの『守ってやってくれよ』が聞こえた気がした。

食堂でまた、万桜が三浦先輩達に囲まれていた。

今にも泣き出しそうな、そんな顔をしている。

アコチャンは何とか中に割って入ろうとしているようだ。

俺はまだ渡してもいない食券とトレーをカウンターに置き、万桜の元へと進む。

「ヒロ、おい!」

旬磨の声は聞こえていた。

が、止められない。

自分でも、もう止められなかった。

「先輩。」

三浦先輩が振り返った。

「あ?」

万桜が俺を見ているのは分かった。

でもどんな表情かは分からない。

ただ、三浦先輩を睨んだ。

その鋭い目も、俺からそらされる事はない。

「俺の彼女なんです。もう離れてもらえます?」