バスに揺られながら、寮へと戻る。

ヒロ先輩は、考え事をしているみたい。

嫌、だったかな?

やっぱり…。

「ヒロ先輩。」

勇気を出して聞く事。

それがアタシのこれからのテーマ。

また静佳さんの時のように、聞かなくて後悔するのは嫌。

それがどんなに小さな事でも。

「今日は一緒に来てくれて、ありがとう。嫌じゃなかったですか?」

アタシを見つめる先輩の目が優しい。

「ん?どうして?」

アタシの顔にかかった髪を、右手で直してくれる。

「嬉しかったよ。万桜が彼氏、って紹介してくれて。」

パッと笑顔が輝いた。

アタシは一緒に来て欲しかったけど、やっぱりヒロ先輩は潤くんに会うの嫌じゃないかな、って思っていた。

「ホント…?」

「あぁ、本当に。二人で万桜の方向音痴で盛り上がったし。」

「えー、嘘!ひどい、そんなの~。」

先輩の袖を引っ張った。

「あはは。」

良かった。

「万桜。」

先輩はアタシの頭を撫でる。

「俺達付き合ってるんだからさ、先輩は勘弁してくれよ~。」

「えっ!?」

「ヒロとか、ヒロっちとか呼んで~。」

可愛いヒロ先輩。

でも…ヒロっちは勘弁です。