2LDKのお姫様

「何それ」



ある木曜日の昼下がり、ホノカが一気に気の抜けた声を出した。



『だから、それが初めて2人で行った旅行よ』



「旅って、ただ喫茶店でお茶して琵琶湖を見に行っただけで」



シオリの長い思い出話に付き合っていたのは、他でもない、この彼女だ。



ボリボリとせんべいを貪りながら、お茶を啜っている。



『そうよ、何か悪い』



「悪いって、そりゃあ悪くはないけどさ……、ジジ臭いのよ。琵琶湖にドライブなんて。あんたたち何歳よ」



ホノカはゲラゲラ笑いながらも、せんべいには手が伸び続けている。



『良いのよ。別に。私は楽しめたんだから』



シオリはせっかくのノロケ話に、まるで水をさされたようで、少しがっかりした。



いや、後悔したのかもしれない。




『あなたに話した私が馬鹿だった』



ムスッとなって、シオリはソファーにうなだれに行く。



「嘘だってシオリ。で、夜はどうなったの」



先ほどとは打って変わって、やけに食いつきが良い。



どうやら、それを待っていたらしい。



『もう良いです』



そう言ったが、ホノカはダダをこね始め、またかと思いシオリは耳を塞いだ。