2LDKのお姫様

結局、買い物はしなかった。


『そこ左ね』


「はい」


車内で交わされる会話は短い。


結婚すればこんなモノなのかもしれないが、やはり寂しいモノだ。


「よけいな事聞いて良いですか」


『何』


正直、一か八か聞いてみたかった。


「シオリさん、やっぱり結婚したら旦那さんにこんな話し方をなさなるんですか」


聞いてしまった。


運転しながらでも、シオリの表情がますます冷たくなって行くのがわかる。


『どうして、そんな事聞きたいの』


「いや、なんか結婚したら冷たくなる人って多いらしいから、シオリさんもそうなのか聞いてみたくて」


『ふーん……』


駄目だ。


本当に駄目だ。


全く溶けない氷と格闘しているような気分だ。


『別に冷たくは無いわよ。そういうのって奥さんより、旦那さんに問題があるんじゃないの』


「そうですか」