2LDKのお姫様

「……どうぞ」


淡い湯気の立つ、淡い青色のマグカップと淡い赤色のマグカップ。


珈琲の良い香りが部屋にゆったりと広がる。


『……ぃただきます』


「どうぞどうぞ」


2つのマグカップにばかり目が行ってしまう。


正直なことを言えば、彼女を見るのが怖い。


恐ろしい。


「あぁ、貰い物のお菓子があるから出すよ」


視線がぶつかりそうになると、つい焦って言葉を探すが、上手い逃げ方が見つからない。


まあいつもの事だが。


『ふふ……。別に怒って無いわよ』


あまりの彼の焦り様につい笑みがこぼれた。


しかし……


「す、すぐに持って来ます」


彼女が急に笑いだすので、逆に怖くなってしまったのだ。


『ちょっと……』


こういう風だから、シオリをよく怒らせるんだと言われているのだ。