落下点《短編》

あれから。

陣ちゃんと別れてから一度も、あたしは誰とも付き合わずにきた。


卒業してから一度、朋也くんから連絡が来た。二人で久しぶりに話した。あたしの後悔や、朋也くんの後悔のこと。

朋也くんは素敵なひとだ。惹かれる部分をたくさん持ってる。

でもあたしが朋也くんと付き合うことは、これからもずっとない。あたしがそう言ったら、朋也くんは少し笑って、ゆっくり頷いてくれた。

今ではそういう関係じゃなく、仕事のグチをたまに電話で言い合える仲になってる。


合コンやら紹介やら誘いはあったけど、出会いの場に行くことすらしなかった。それくらい、心にぽっかり開いた穴を修復するには時間がかかった。

彼が抜け落ちたあとを、他の誰かや何かで埋めようとはなかなか思えなくって。


陣ちゃんは、あたしの人生の中で、一番キラキラしていた時間の中で、大きな存在でありすぎた。


…陣ちゃんが今、どこで何をしているのかあたしは知らない。

こっちにいるのかもしれないし、地元に帰ったのかもしれない。全然違う県に行ったのかもしれない。

別れたあの日から。あたしはあたしの道を進み、彼は彼の道を進んでいる。


二つに分かれた道は、違う場所に向かって続いている。




─1ヶ月ほど前に、会社の先輩から告白を受けた。

何度か食事には誘ってくれていたけど、ただ先輩として面倒を見てくれているだけかと思ってたから、本当に驚いてしまった。

先輩はとても落ち着いた、優しいひとだ。口調とか物腰がやわらかい。


さんざん返事を待たせた末、あたしはつい先日、彼と付き合うことを決めた。


あたしも前に進まなきゃいけない。今度こそ、目の前のひとを大事にする。きっとできる。

そうしてたくさんのものを積み重ねて、いつか深くて暖かい関係を築いていければいいと思う。



しばらく歩いて、見慣れない道に出てきてしまった。

初めて行ったお店だったから、もしかしたら帰り道を間違えたのかもしれない。


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