落下点《短編》

旅費でどんどん飛んでいったから、お金もなくって。

一週間を800円で過ごさなきゃならない状況にもなったっけ。

忙しいとか言いながらぎゅうぎゅうに遊ぶ予定詰め込んで、あっという間に卒業式が来て。

みんな色とりどりの晴れ着来て、写真いっぱい撮って、そのあとは友達たくさんでドレス着てパーティーとかして。


「就職してもお茶しまくろうね!」


…そう言って別れたけど、実際に行ったのは数えるほど。学生時代とは、比べものにならない。

みんなそれぞれ忙しいんだろう。あたしだってそうだ。自分のことに精一杯で、周りのことなんて見えてない。


…一昨年の、今頃は。その前の、冬は。


陣ちゃんとばかり、過ごしていた。

朝起きたら陣ちゃんの顔が目の前にあって、昼前に一緒に大学に行って、夜はご飯を食べて、一緒の布団で眠って。


陣ちゃんばかりの、毎日だった。

寒い季節。ぎゅうっと、お互いをカイロ代わりにして抱き合って眠った。

陣ちゃんの体温は低めだったけど、それでも触れる肌は温かかった。


…別れたあの日から、陣ちゃんとはまともに会っていない。

もともと学部も違うし、食堂にも通わなかったから。ほとんど毎日会っていた日々。あれは、お互いに会おうとしていたからあったものなんだと思い知る。


卒業式で、一瞬だけ、陣ちゃんを見かけた。


陣ちゃんはこちらに気づかず、あたしの知らない人と話して笑ってた。

笑顔は遠くて、あたしが一番近くにいたなんて、幻覚だったようにすら思えて。

仲の良かった六人組の集まりは、三年の秋の飲み会で最後だった。今でもサチとはご飯に行ったりするけれど。

それは大部分があたしと陣ちゃんが別れてしまったせいで、もうひとつは流れた時間のせいでもあった。


…会わない日々は、人の心を少しずつ離してしまうから。

それって、すごく寂しいことだ。


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