落下点《短編》

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昼下がりの街角は慌ただしかった。

人の流れるスピードが速い。みんな忙しいのか、急かされるように歩みを進める。

あたしも乗り遅れないように、低めのヒールに力を入れて歩き出した。



…就職一年目というものは、思ったよりもずっとハードだった。体力的にも、精神的にも。

大学を卒業し、今の会社に入ってから半年をとっくに過ぎて、もう冬に突入しようとしている。

襟元の開いた服じゃ、身震いしてしまうくらい寒い。


結局、就職は地元には戻らなかった。一人暮らしの自由さに慣れてしまっていたし、友達は県外就職が多いから地元に帰っても会えない。

こっちに残ることにしたものの、少し心細い気持ちもあった。

仕事もいまだに要領がつかめないし、周りに遅れを取らないようにするのが精一杯だ。疲れてまともな家事をしないこともしばしば。

会社でできた友人と昼休憩にランチに行くことだけが、唯一ホッと一息つける時だった。


今日もおいしいと評判のオムライス屋さんにランチに行ったばかり。

一緒だった友人は先に帰った。食事途中に急に会社から呼び出しが入ったのだ。


おかげで食後のコーヒーを友人の分まで2杯も飲んで、お腹がちゃぷちゃぷいっている。


忙しさに巻かれるようにして過ごす毎日。

仕事以外のことに悩む暇もなくて、日々の流れがとても速い。


人をよけながら進む歩道。コートからはみ出た手の先がかじかむ。

両手をすり合わせながら、はぁっと息を吐いて暖めた。


…去年の今ごろ、あたしは何をしていたっけなぁ。

学生時代に思いを巡らす。

友達と旅行して、遊びすぎて、後から余裕あったはずの卒論に追われていた気がする。


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