落下点《短編》



『花火、楽しかったな』

『俺さぁ、一番線香花火が好きやねん』


『へ…うそ、あっあたしも!!あんな、あのぽたって落ちる瞬間がな!一番好き…』


『ははっ、俺も好きや』


─自分が好きなものを、彼も好きだと言ってくれること。



『…うん、あんな。好きやわ』


『ん?ははっ、そんな好きなん?花火──』


『そうやなくて、』



──陣ちゃん。



『俺、多分、朋美が思っとるよりずっと、朋美のこと、好きやわ。…うん、改めまして、やけど』



星空の下で、キスをした。

あたしはあの時、思ったんだ。このまま世界が終わってもいいとすら、本気で思った。


そのときが、あたしたちの頂点だった。一番てっぺんの、その先には、緩やかな下り坂が、ずうっと延びていたのだ。緩やかな傾斜で、でもそれは確実に、下へ、下へと。

わかってた。気づいてたのに、気づかないふりをしてきた。

気づかないふりをして、現実を見ないで、綻びを結んではカタチだけの元通りを取り繕って。


涙がにじんで止まらない。


…もうずっと、キスもしていない。



「…陣ちゃん」


あたしから、陣ちゃんの手を握った。

陣ちゃんは驚いたように目を丸くして固まる。空気が硬度を増す。


「陣ちゃん…っ、」

「………」

「前みたいには、どうしても、戻れへんのかなぁ…っ?」


握った手が、握り返されることはない。骨ばった陣ちゃんの、あたしより冷たい手。


この手のひらがあたしに触れなくなって、もうどれくらい?


「──朋美、俺は」
「陣ちゃん」



…渇いた唇に、身を乗り出してキスをした。



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