コタツの中で縮めていた身体が、ぎゅっと強張る。
「……朋美?」
ずうっと遠のいてしまっていた声が、耳元で聞こえた。
一度、ちゃんと話そう。
心を決めてそう言ったら、陣ちゃんは「今から行く」と言って電話を切った。
チャイムが鳴ったのは、その日の夜9時前だった。
玄関へ行き、ドアを開けるとそこには陣ちゃんが立っていた。少しくたびれたセーター姿の、陣ちゃん。
あたしはただ呆然と立ち尽くして、久しぶりに見る陣ちゃんの輪郭をなぞる。陣ちゃんの鼻の先は赤かった。
「…寒かったやろ?…コーヒーとか、飲む?」
「あー…ええよ、ありがと、大丈夫」
くしゃっと顔を歪める陣ちゃん。へたくそな笑顔。目の前にいるのは、紛れもなく陣ちゃんだった。寒そうに首をすくめる。
その首にはぐるぐる巻きにした、マフラーがあって。
あの日から一度も、連絡すら取っていなかった。まだ現実味の薄い世界の中で、あたしは何も言えずに陣ちゃんを見つめる。
…何を。何から、切り出したらいいんだろう。
「…朋美?」
「…うん、ごめん…なんか、なんかな。変なかんじで」
「………」
「だって…全然、連絡…してへんかった、から…」
言葉がつまった。目の奥と、喉の奥が熱くなる。
「…朋美」
ふ、と陣ちゃんがあたしに向かって指を伸ばした。
あたしが顔を上げると、戸惑ったように宙をかいて引っ込んでしまうその指。
指の先が頬にかすかに触れることすら、無かった。
「…気のせいやったら、ごめん」
「……なに?」
冷え込んだ玄関。沈黙の中、陣ちゃんの声が低く響く。
「…朋美、もしかして…泣いとった?」
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