落下点《短編》

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一度崩れてしまえば、ガタガタと壊れていくのは簡単だった。


あたしが何度も心に唱えた"元通り"とはなんだったのだろう。

その元のカタチすら、もう思い出せなくなってしまいそうだ。

いつかは消えると思っていた過去の罪。消えるわけがなかったのだ。それは深く根をはって、あたしたちのもろい土台を揺らす。


…消えるわけがなかった。

だってそれは実際にあったのだから。

散々陣ちゃんを傷つけて、彼の心を蝕んだ、事実が。




…陣ちゃんとは、あの日以降全く会わなくなった。

それどころか連絡もとらないで、もう一週間が立つ。


はっきりと終わったわけじゃない。


連絡しなければ、何度もそう思うのに、あたしはそれが怖かった。きっと陣ちゃんは、「ごめんな」って言う。あたしも言う。「ごめんね」って。

ごめんね、と、ごめんな、がまたひとつ増えて。あたしたちは謝り合う。謝って、それで。


…それ以外の会話は、どこにある?


連絡したら、何もかもが本当に終わってしまう気がした。

あたしたちは中途半端なまま、白いもやの中に漂っていた。





"朋美元気〜?"


ガイダンス帰りの電車の中。携帯に、サチからのメールが入った。

久しぶりだ。サチも忙しいみたいで、しばらく恒例のランチも居酒屋も行ってなかったから。

ガイダンス疲れの眠い頭で、サチからのメールを読み上げる。


"久しぶりに語ろ!来週暇な日あったら教えて〜。あと、"


「………」


"よかったらそん時今までの旅行とかの写真のデータ、くれへん?"


…写真。

陣ちゃんにもらったデジカメで撮った、思い出。

そう言えば撮るだけ撮ってパソコンに保存して、現像は全然していなかった。


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