落下点《短編》



その日の晩の夕食は、陣ちゃんちであたしが作った。


油揚げの肉巻きとじゃこのサラダ。少し前にサチと行った居酒屋で食べたものがおいしくて、それを真似てみたらなかなかの出来だった。

コタツの中の足の裏が、過度な熱にチリッと痛む。

陣ちゃんは炒めたじゃこを口の中でカリカリ言わせながら、「うまい」と感心したように言った。




陣ちゃんが譲ってくれたから、あたしから先にお風呂に入ることにした。

シャワーの湯を、頭からかぶる。頭皮を刺すように、線となった雨粒が降り注ぐ。


その暖かさがゆっくりと中にしみて、あたしはようやくホッと息をついた。


…陣ちゃんが、いつも通りでよかった。


ホッとした。昼間、あの瞬間。陣ちゃんの横顔は、あたしが今までに見たことのないものだったから。

怖かった。冷たかった。まるで、感情を無くしてしまったみたいに。


…あたしたちは、大丈夫だ。大丈夫。


心の中で、まるで呪文みたいに唱える。


しがらみはゆっくり、いつかは薄まって消えてくれる。

そうしていつか、陣ちゃんが笑ってあたしに触れてくれる日が、来る。


あたしたちはいつも通りだ。だから、大丈夫。


風呂場から脱衣所に上がったとき、脱いだジーンズからあたしの携帯の着メロが鳴るのが聞こえた。

…ポッケに入れっぱなしやったんか。

危うく洗濯してしまうところだったと、ホッとして携帯を取り出す。


携帯の音は止まなかった。着信は、メールじゃない。

電話だった。


画面を開いて、あたしは思わず息を呑む。


「────」


…表示された着信は、朋也くんからだった。


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