だが、そこで思いがけない音が部屋に響き渡った。



ジリリリン、と電話のベルのような音。だが、部屋の何処にもそれらしきものは見当たらない。


だが青年はその音を聞いた途端に顔色を変え、そしてはめていたやはりボロボロの腕時計に目をやった。



音源は少女の直ぐ横に置いてあった小さな青い宝石のような石。これもまた青年の発明品なのかその周りにはそれに使われている部品の欠片が転がっている。




「大変だっ!時間が迫ってる事なんかすっかり忘れていたよ・・・。ああ、折角最高傑作を作り上げたのに遅れてしまっては意味が無い・・・・。」



青年は顔面蒼白になり、辺りに散らばっている様々なものを踏んだり蹴ったりしながら何かを探し始めた。



たまに意識はしていないのだが、寄せるために投げた物が少女に当たりそうになる。



しかし少女は身動き一つしないでただただ青年の姿を見つめていた。




「えっと・・・新しい白衣は何処だったかな・・・。お!あった・・・・」




青年はダンボールと大量の本の間に挟まっていた『新しい白衣』なるものを取り出した。


しかし汚れや傷こそ無いものの、やはりシワだらけで新しさは微塵も感じられない。



だがそれでも青年は嬉しさの余り、先程と同じ様に両手を振り上げて喜んだ。




が、



「あ」


たったそれだけの短い言葉を発して青年は硬直。

青年の右手がよく分からないものだらけの山にほんの少し触れていた。そしてそれは、スローモーションで崩れ真っ直ぐに少女目掛けて倒れこんでゆく。




少女の視界を大きな影が覆った。




「うわわわわわぁ!」



青年は情けない叫びと共に手を伸ばすが、最早崩れる勢いを止めるばかりかさらにそのスピードを速めた。




どごぉんっ



部屋中に煙が立ちこめる。

青年はしりもちをついてガタガタと震えた。




だが、煙が晴れてゆく中で青年は身動き一つしなかった少女が左手を振り上げた状態で立っている様子を確かに捉える。




「”お怪我はございませんか?”」