”『め』をあければそこに白衣の『ひと』が居た。”




薄茶色の眼に、青みがかった黒色の髪。顔立ちは、整っている。


しかし折角精悍な顔つきであるにも関わらず、髪はぼさぼさで特に右サイドの寝グセが本当にひどい。眼の下には相当黒ずんだクマが存在している。


身なりも身なりで、大部分を占める白衣は所々破けたり、シミがついていたり・・・・と相当な年季が感じられる。




”何故か両手をあげて『わらって』いた”





「さて・・・完成を記念してこの子には名前をつけてあげないとな。」




まだ年若い青年の声であった。



たしかに、整えられていない部分を除いてゆけば青年ととれる。青年は心底嬉しそうに笑っていて目の前にあるものに対しての言葉を呟いた。





”『なまえ』・・・?ああ、私にはまだ呼ぶために最も重要な情報の一部が欠けているのね。きっとそのこと・・・・”




青年の目の前には、ほんのくすみも無い真紅の髪と瞳を宿した少女が佇んでいる。


だが、紛れも無く見た者全てに強い印象を刻み付けるであろうその色さえも淡くなるようなあどけなさが少女の表情に含まれていた。



まだ赤子の様な不純の一切を寄せ付けないような無垢な瞳、唇、頬・・・。




少女はただじっと青年を見つめ続けている。




青年はそっと少女のクセの無い美しい髪をすくって、それから頬を手の甲で優しく撫でた。




「うん、やっぱり最高の出来だよ!これで王も僕の研究を認めてくれる・・・・・。だから名前は・・・・・」