死んだ大好きな君を3月14日までに救いたい




 幼馴染の桜庭美桜は、すれ違う人が二度見するほどの美少女だ。
 黒くて長い艶のある髪。
 クリッとした目。
 小さい口と鼻と顔。
 すらっとしたモデル体型。
 美桜は、その視線に気づくと「また律のこと見てるよ」と隣で口を尖らせる。
 ぷっくりとした唇を見つめては、視線を逸らす。
 いや、各方面からの視線は俺じゃなくてお前を見てんだよ。
 本人は自分のことだと気づいていない。
 俺はいつも「美桜のこと見てんだよ」と心の中で思うだけにしている。
 ムスッとした顔の美桜を見られるのは、幼馴染である自分の特権だからだ。

 昨日の2月13日。
 美桜にLINEを送ろうと画面を開いていると、ちょうどメッセージが届いた。

「やべ。すぐ既読つけるとか、ずっと開いてたみたいじゃねえか」

 家のリビングでテレビに向かってそう吐き捨てる。

「律、何独り言言ってんの?」

 高校生の兄貴にツッコまれて「何でもねーよ」と足早に自分の部屋に向かう。
 画面をもう一度見るとやっぱり美桜だ。

<桜庭美桜:明日の放課後、話せない?>

 明日の放課後?
 話があるってもしかして……。
 いや、期待するのは早い早い。
 落ち着け。俺。
 こういうときは駆け引きをして、少し時間を置いてから返事をした方がいいとクラスの男子たちが騒いでいたが……。
 すぐにでも明日の美桜の予定を確保しなければならない。
 駆け引きなんてごめんだ。
 即レスして画面をまたもや眺める。

<桜庭美桜:明日の放課後、話せない?>
<白谷律:りょーかい。俺もちょうど話したいことあったから>

 今年のバレンタインデーに望む輩たちは、一風変わっていた。
 それには理由がある。
 イタリアでは、バレンタインデーを“恋人たちの記念日"と呼ぶそうで、男性から女性にプレゼントを贈る日だといわれている。
 それがSNSで広まり、その情報に尾ひれがついて、今年のバレンタインデーは、男が女に告白しよう!と学校中の男たちが燃えに燃えているのだ。
 小一から中二の今日まで朝登校することで、美桜に視線を向ける男どもを排除してきたが……。
 今まで美桜と付き合うことを諦めてきた輩も、これを機にその気になってしまうかもしれない。
 可能性が数パーセントでも上がってしまうなら、美桜の予定を押さえてしまえばいい。
 明日、俺は、ずっと言えなかったことを美桜に伝えるんだーー。