恋のエンドロールでキスをして【小説版】

「海莉」

咎めるように怜が名前を呼ぶが、彼は全く動じない。

「怜はちょっと黙ってて」

「は?」

怜の不満の一文字を聞こえないふりをして、柊さんは私に向かって饒舌に話し始める。

「まずREIって言うサークル名は監督やってて立ち上げメンバーである怜の名前から。で、散らかってるけどここ部室ね」

(部室……)

その言葉にようやく腑に落ちる。この小さな部屋には色々なものが雑然と置かれているが、ここにあるものがあれば映画作りは可能に見えた。

「こっから本題。実はシナリオ書ける人、ずーっと探してて。勧誘して希望者現れても怜が全然オッケー出さないからさ、すっごく困ってんの」

「海莉、お前な」

「ほんとのことじゃん〜」

柊さんは怜の肩をおどけたように突いて見せる。突かれた怜は彼を睨みつつも、視線をこちらに向けた。

「てかコイツほっといてもう行けよ」

「え、でも……」

偶然にも、さっき気になったサークルが怜のサークルでさらには脚本家募集なんて、興味しかない。

「ダメダメ〜待って。うちの監督がほんとごめんね〜こんな感じで脚本家がずっと不在なんだ。怜とも知り合いなら色々、プロットの擦り合わせとかもやりやすいと思うし」

「海莉、いい加減にしろって」

やや大きめの声で睨む怜をチラッと見ると、今度はさりげなく彼をソファーに無理やり座らせる。

「はいはい、怜はちょっと昼寝しててー」

「おい……ちょっ……」

「でさ、良かったらうちのサークルで脚本やってくれると嬉しいんだけど?」

くるりと振り返ると、柊さんは両手を合わせてお願いのポーズをしている。

「え……、でも」

「絶対楽しいし、いい映画一緒に作ろ」

こんなチャンス願ってもない。

(怜と同じサークルで一緒に映画作れるなんて夢みたい……)

思わず「はい」と返事をしようとして、思い切り自分の口を手のひらで覆った。

「ん? どうしたの?」

「あの……願ってもないお誘いなんですけど……」 

「けど?」

(怜はいいのかな……ってこんな気まずい状況でいいわけないよね……)

(ただでさえ、他人でって言われてるのに)