「何で……何にも言ってくれないの? あの時だって……」
「心の中、全部正直に言えば、本当になんの?」
「え?」
「どうせ願っても叶わないなら、はじめから願わなきゃいいんだよ。なかったことにすればいいんだ」
怜はいつだって感情的になったりしない。飄々としてて、何を考えてるかわからなくて、本当に大事なことを一欠片でも私に話してくれたことはあるのだろうか。
「どう言う意味?」
「要は俺らは他人ってことでいいじゃん」
まるで本当の心の中を見透かされないように、本音をさらす直前で突き放して背を向ける。
「嘘つき」
「何が?」
本当に他人だと思っているなら、どうして私に過去を思い出させるような言動をしたのか。
私に名前を呼ばれても無視すればいいし、DVDだって別に私が借りようが赤の他人だと言うのなら、放っておいてもなんの問題だってないはずだ。
怜は本当に嘘つきで、どうしようもなく嘘が下手だと思う。
「……じゃあ思わせぶりなことしないでよ。そんなに他人がいいなら、最後まで私のこと忘れたフリをすればよかったじゃない。そうすれば、私も……怜と関わろうなんて思わなかったのに……っ」
「…………」
この場で泣きたくなんてないのに、ずっと我慢しているから語尾が少し涙声になってしまった。
勘のいい怜はきっと気づいてる。
──だから何も言わない。
これ以上何か言えば、私が泣き出すのがわかっているから。
怜が黙ったまま立ち上がると、私が大事に抱えているDVDをすっと抜き取った。
私は拳を握ると、怜の目を真っ直ぐに見つめた。
「教えて……何があったの?」
「……もう出てけよ」
「出ていかない。怜が話してくれるまで」
怜が私から視線を逸らすと、軽く唇を噛むのが見えた。
その時、外から足音が聞こえてきたと思えば、扉が勢いよく開いた。
「夏宮監督いた~、探したじゃん〜」
(え?)



