起き上がった際に、怜がつけているシトラスの香りがふわりと鼻を掠めて、心臓はまだドキドキしたまま収まる気配がない。
「あ、りがと……」
か細い声に怜が「別に」と答えてから、こちらを指差す。
「てか、それ返せよ」
「あ……」
私は転びそうになりながらも手にした、右手の中のDVDに目を遣る。
「さっきも言ったよな。それ花が思ってるようなのじゃないって」
ソファーに座り、長い足を組んだ怜を見ながら、私はDVDを胸の前でぎゅっと握りしめた。
「……それでも見たい」
「え?」
「きっと、怜の想いがたくさん詰まってる映画だから」
「……」
怜はわずかに目を見開いてから、乾いた声でふっと笑った。
「いい加減にしろよ。ハッキリ言って迷惑だわ」
「怜?」
「もう俺は昔の俺じゃない。花の知ってる俺はいない。だから金輪際、関わるなって言ってんの」
「……何それ。怜はいっつも自分勝手で……大事なこと何も言ってくれないじゃないっ」
「わかったようなこと言うな」
低くそれでいて冷静な声色に、自分が駄々をこねている子供みたいな気持ちになる。



