恋のエンドロールでキスをして【小説版】

「なんで……、何で知らないフリするの?」

「別に……いいだろ。とにかくもう俺に話しかけんな」

「怜?」

「名前も呼ぶな。じゃあな」

怜は私が掴んでいる手を振り解くと、再び階段を下り始める。

「……なによそれ……どれだけ勝手なのよ」

これじゃあ、あのときと一緒だ。
突き放すだけ、突き放して理由は言わない。

(もう、我慢しない。知らないフリなんかしてあげない)

あの時、ちゃんと理由を聞いていればなんて、あとから何度もやってきたどうしようもない後悔はしたくない。

私は怜が二階の角を曲がるのを見ながら、ぐっと拳を握ると階段を下りていく。

そして怜が突き当たりにある、古びた扉を開けるのが見えた。

「夏宮怜! 待ちなさいよっ!」 

辺りに誰もいないが、結構な声量だったと思う。部屋に入りながら、一瞬こちらを向いた怜の怪訝な顔が見えたが、知ったことではない。
そんなこと気にしていたら怜とはこれきりっだ。

(せっかく会えたんだから……せめて理由が知りたい)

私は少し息を乱しながら、数秒遅れて怜が入った部屋の前にたどり着く。

扉にはには古い用具室のプレートがついていて、この中に怜がいることを不思議に思ったが、今はそれどころじゃない。

「怜っ」

勢いよくドアノブを捻って中に入れば、エンジ色の皮のソファーに寝転んだ怜と目が合った。

「……なんだよ、うるせーな」

冷たい目に怯みそうになるが、私は部屋に入ると後ろ手に扉をパタンと閉めた。