何の根拠もないのに、また会えれば一緒に夢を追いかけられるなんて、そんな稚拙なことを心から願っていた。私だけが──。
「……そんなの映画の中だけ……」
私は床に丸く落下した雫を暫く見つめてから、手の甲で雑に拭い、ゆっくり顔を上げた。
いつまでもここでこうしてても時間の無駄だ。夢のためにも応援してくれている両親のためにも、限られた学生生活を一分一秒でも大事にしたい。
「切り替えよ……怜に会うためじゃない。自分の夢のために大学に来たんだから」
怜に忘れられていたことはあまりにショックだし、きっと家に帰ってからもまた涙は溢れるだろう。
それに大学に通っていればこれから少なくとも三年、また彼を見かけることだってある。正直、憂鬱なのは確かだ。
でもかと言って、大学をやめるつもりも変えるつもりも、なんならこのまま俯いて夢を放り投げるなんてこともあり得ない。
そんなの私らしくない。
絶対に脚本家になる。
誰かの心を揺さぶるような心の冒険を描きたい。
そのために夢に向かって邁進するのみだ。
「よし! さっきのは怜のソックリさんとして忘れよう!」
私はそう言葉に吐いて自分を励ますように、小さく拳を握ってから、ようやく視聴覚室のガラス扉を開けた。



