おしゃれハッカー

「ま、まさか、幽霊じゃないからに?」
 ドキリとした。頭ではわかっていても、苦手なものや怖いものはわたしにだってある。でも、感情に流されるというのはわたしらしくないよね。
「幽霊じゃないわ。論理的に考えて、きっとただの女の子よ」
 わたしは自分に言い聞かせるように言った。それから、ゆっくりと女の子に歩み寄る。心臓の鼓動がだんだんとはやくなっているのが自分でもわかる。
「どうしたの? なんで泣いてるの?」
 まだ新しい赤色のランドセルを背負って黄色の帽子をかぶっている。見たところ1年生か2年生よね。品のある顏立ちをした三つ編みの少女で、よそ行きみたいなレースのついた真っ白なブラウスを着ているわ。こんな小さな子が遅くまで何をしているんだろう。不思議だわ。
「あのね、ママに借りてたネックレスが壊れちゃったの」
 ほっとした。なんだ、この子はお化けじゃない。でも、うつむいたままの少女に何と声をかければ良いのかわたしにはわからない。力になりたいのに、なのになんにもできないの。
「ママは許してくれるよ」
 自然と口から出たのはそんな言葉。うん、わたしのママがもし生きていたのならきっと許してくれるはず。
「そうかな、ママはこのネックレスが大事なものだって言っていたけれど……」
「だいじょうぶだよ。正直に話せばきっと許してくれる」
 だけど、少女はあんまり納得していない様子だった。
「無責任にそんなこと言って。わたし2年生なんだから誤魔化されないもん。正直に話してもママは怒るんだ」
 くりっとした愛くるしい瞳をうるませてじっとこちらを見つめてくる。近頃の子供ってこんなに難しい言葉を知ってるんだ。びっくり。わたしが2年生の頃はもっと単純で幼かった気がするのにな。