「はぁ、それにしても、師匠ってば自首することないのにねぇ」
風香ちゃんがわたしの机の隣に立って言った。師匠とは、結城くんのことだ。漫画のテクニックを教わっているから師匠と呼んでいるらしい。
「でも、悪いことをしたのは事実だからね……それに、結城くんがそうしたいなら、それでいいんじゃないかな」
結城くんは学校や図書館の電子書籍やデータを改ざんしたことを自分から自首した。偉いなとわたしは思う。だって、逮捕されちゃうかもしれないんだよ?
幸いなことにデータはすべて復元されていたので怒られる程度ですんだらしい。おまけに何か後ろ暗いことでもあるのか、肝心のモノスバルが捜査に協力的ではなかったみたい。
そうは言っても、校長室に呼び出しをくらって、きつーい説教を結城くんは受けたみたい。
そんなわけで、モノスバルの事件はうやむやになっちゃった。事件はハッカーチーム『ショコラ』の自作自演だという噂も流されているけれど、現場を見た記者さんたちは『ショコラ』を応援する記事を書いてくれた。
「それじゃ、行こうかっ! スクープの臭いがするもんっ!」
わたしたちが向かったのは廃校舎……でも今では巨大な本屋さんだ。ここに結城くんは家族と暮らしている。なんだかちょっとうらやましいな。学校がお家だなんて!
「なんだよ、また取材か?」
結城くんが呆れたように言う。図書館のお城には美術室には美術の本が、音楽室には音楽の本が置いてある。それぞれの教科に対応して本が並べられているのだ。楽しそうだからとわたしたちJSN編集部のメンバーはその様子を取材をしながら改装作業も手伝った。
「師匠は冷たいなぁ」
「ちょっ、くっつくなよ! はずかしいだろ! 愛花たちもいるんだぞ」
風香ちゃんてばスキンシップがすごいからねぇ、わたしも最近じゃところかまわず風香ちゃんに抱き着かれてるし。
「やぁ、みんな元気にしているみたいだね」
ジーンズの上にシャツを重ね着しているだけのシンプルな恰好。それなのに、とっても絵になるのはイケメンの特権ですね、いや、美少女か。
「なれなれしく愛花の頭をなでるなよ」
あ、結城くんは優海さんのことを男の子だと勘違いしているみたい。だけど、優海さんってば、お茶目な性格だったのか、結城くんには女の子であることを隠して反応を楽しんでいるの。優海さんって言っているけど、例えば海くんなんて名前の男の子もいるから、案外わからないものなのね。
「今日はこれさ」
優海さんはタブレットをかかげた。
用務員室……すなわち結城くんのお部屋で優海さんがタブレットを操作する。ハッカーショコラのアカウントはフォロワーがどんどんと増えて続けて5万人を超えた。すごいと思うのだけれど、まだまだだと風香ちゃんは言う。
「それにしても事件の依頼が増えたわね……」
そう、わたしたちはメディアに登場し、事件を解決すると一気に人気に火がついた。ある時はアイドルとして、ある時は正義の味方として。もちろん中にはわたしたちのことを悪者のように言う人もいるけれど、そんなことをいちいち気にしていたらきりがない。
「こんなに困っている人がいるんですね」
わたしは思わずため息をつく。わたしが思っている以上にサイバー攻撃や個人情報を狙う犯罪は増えている。だけど、わたしたちなら、きっとどんな難事件も解決できるよね!
「事件を解決する前にみんなであれをしましょうよ! せっかく三人そろったんですから!」
「ああ、あれね!」
優海さんは買ったばかりの真新しいギターケースを開けた。白黒のモノトーン柄をしたV字のエレキギターなのだけれど、優海さんによると初心者にも弾きやすいタイプなのだそうだ。
「けっ、カッコつけてさ……」
結城くんったらことあるごとに優海さんにつっかかるからやけに子供っぽく見えてしまう。
「師匠、そんなことを言う男はダサいですよっ!」
風香ちゃんが取り出したのは水色パステルカラーの電子キーボード。こちらも初心者向け。三人でお店に行ってそれぞれどんな楽器を買うか決めたんだ。まずは扱いやすそうな楽器で、価格も手ごろなものから始めることにしてみた。
「まさか、おとなしかったマナちゃんがバンドを組みたいなんて言うとは思わなかったらに」
そう言ってわたしのランドセルから顔をだしたらにちゃん。
風香ちゃんがわたしの机の隣に立って言った。師匠とは、結城くんのことだ。漫画のテクニックを教わっているから師匠と呼んでいるらしい。
「でも、悪いことをしたのは事実だからね……それに、結城くんがそうしたいなら、それでいいんじゃないかな」
結城くんは学校や図書館の電子書籍やデータを改ざんしたことを自分から自首した。偉いなとわたしは思う。だって、逮捕されちゃうかもしれないんだよ?
幸いなことにデータはすべて復元されていたので怒られる程度ですんだらしい。おまけに何か後ろ暗いことでもあるのか、肝心のモノスバルが捜査に協力的ではなかったみたい。
そうは言っても、校長室に呼び出しをくらって、きつーい説教を結城くんは受けたみたい。
そんなわけで、モノスバルの事件はうやむやになっちゃった。事件はハッカーチーム『ショコラ』の自作自演だという噂も流されているけれど、現場を見た記者さんたちは『ショコラ』を応援する記事を書いてくれた。
「それじゃ、行こうかっ! スクープの臭いがするもんっ!」
わたしたちが向かったのは廃校舎……でも今では巨大な本屋さんだ。ここに結城くんは家族と暮らしている。なんだかちょっとうらやましいな。学校がお家だなんて!
「なんだよ、また取材か?」
結城くんが呆れたように言う。図書館のお城には美術室には美術の本が、音楽室には音楽の本が置いてある。それぞれの教科に対応して本が並べられているのだ。楽しそうだからとわたしたちJSN編集部のメンバーはその様子を取材をしながら改装作業も手伝った。
「師匠は冷たいなぁ」
「ちょっ、くっつくなよ! はずかしいだろ! 愛花たちもいるんだぞ」
風香ちゃんてばスキンシップがすごいからねぇ、わたしも最近じゃところかまわず風香ちゃんに抱き着かれてるし。
「やぁ、みんな元気にしているみたいだね」
ジーンズの上にシャツを重ね着しているだけのシンプルな恰好。それなのに、とっても絵になるのはイケメンの特権ですね、いや、美少女か。
「なれなれしく愛花の頭をなでるなよ」
あ、結城くんは優海さんのことを男の子だと勘違いしているみたい。だけど、優海さんってば、お茶目な性格だったのか、結城くんには女の子であることを隠して反応を楽しんでいるの。優海さんって言っているけど、例えば海くんなんて名前の男の子もいるから、案外わからないものなのね。
「今日はこれさ」
優海さんはタブレットをかかげた。
用務員室……すなわち結城くんのお部屋で優海さんがタブレットを操作する。ハッカーショコラのアカウントはフォロワーがどんどんと増えて続けて5万人を超えた。すごいと思うのだけれど、まだまだだと風香ちゃんは言う。
「それにしても事件の依頼が増えたわね……」
そう、わたしたちはメディアに登場し、事件を解決すると一気に人気に火がついた。ある時はアイドルとして、ある時は正義の味方として。もちろん中にはわたしたちのことを悪者のように言う人もいるけれど、そんなことをいちいち気にしていたらきりがない。
「こんなに困っている人がいるんですね」
わたしは思わずため息をつく。わたしが思っている以上にサイバー攻撃や個人情報を狙う犯罪は増えている。だけど、わたしたちなら、きっとどんな難事件も解決できるよね!
「事件を解決する前にみんなであれをしましょうよ! せっかく三人そろったんですから!」
「ああ、あれね!」
優海さんは買ったばかりの真新しいギターケースを開けた。白黒のモノトーン柄をしたV字のエレキギターなのだけれど、優海さんによると初心者にも弾きやすいタイプなのだそうだ。
「けっ、カッコつけてさ……」
結城くんったらことあるごとに優海さんにつっかかるからやけに子供っぽく見えてしまう。
「師匠、そんなことを言う男はダサいですよっ!」
風香ちゃんが取り出したのは水色パステルカラーの電子キーボード。こちらも初心者向け。三人でお店に行ってそれぞれどんな楽器を買うか決めたんだ。まずは扱いやすそうな楽器で、価格も手ごろなものから始めることにしてみた。
「まさか、おとなしかったマナちゃんがバンドを組みたいなんて言うとは思わなかったらに」
そう言ってわたしのランドセルから顔をだしたらにちゃん。


